10時頃来てよね

奇妙な実話(怪談)の覚書き。

友達の部屋に幽霊が出る話 <デニムの男>

友人Aが独り暮らしをしているマンションに泊まりに行ったときの話。

 

前回、冷蔵庫が夜中に動くから寝る前に真言を唱えている、という友人Aの家に、また泊まりに行くことになった。

推し活に誘われてのことだった。あと仕事で少し悩みがあるらしい。

 

友人Aが勧める海外ドラマをある程度見たあとの休憩中、冷蔵庫に真言を唱えてきた彼女に、「まだ効いてる?」と私は何気なく尋ねた。彼女の行為を疑っているわけではなく、夜中起こされずにいる状態かどうかという意味で。

 

「冷蔵庫には効き目あるみたい・・・。でもな、寝てると、枕元に男の人がおんねん」

 

「どゆこと?」

「あんな、夜寝てると、若い男の話し声がすんねん。最初はテレビつけっぱで寝たせいかと思ってんけど。でもイヤな感じじゃないからほっといてん」

「何て言うてるん?」

「はっきり聞き取られへんねん。だから夢か、寝ぼけてるんかもって」

 

声が聞こえる状態は1週間ほど続いたらしい。

 

「あんまり話し声がやかましいから起きてん。起きて電気付けて、うるさいっ!って言うてん。ほんなら、青いジーパン履いた若い男の人がびっくりした顔でベッドの脇に立ってはって」

「まじか」

「しかも話してたのは私にじゃなくて、なんか足元におる小さいやつにやねん」

ジーパンの男と、もう1体?」

せやねん。なにかはハッキリ見えへんねんけどな、R2D2みたいな形の・・・」

「犬とか猫じゃなくて、縦長ってこと?」

「そうそう。ジーパンの青年の膝くらいまで」

「ふーん・・・」

 

さすがにそれは・・・あかんのちゃうか。と私は一瞬思った。

それでも、彼女に対する私の信用というか既知の人間性として、急にそんな突飛な作り話をする人間ではないのだ。昔から持病がありたまに寝込むことや入院したこともあるが、基本的には元気に仕事もバリバリこなし、資格の勉強もし、真面目で誠実な女性なのだ。

 

「ほんで?」あたかも当たり前のように、日常会話のトーンで話してくる彼女が、そのジーパン青年を認識してからどうしたのか気になった。

 

「例によってな、真言を唱えた。3回。ほんなら、”え~?”っていう不満そうなリアクションして消えてった」

 

「ふーん・・・。それは、いつ頃から?」

「ここ半年くらいかなあ。週1か2で。真言唱えると消えるし、なんか怖いとかじゃないし、ええかなって」

「平気?」

「一応、お祓い行ったほうがいいかなとは思ってる」

「せやんな!?心霊現象的な話してるよね?」ようやく言えた。自覚してるなら良しか。

「あんま自覚ないねんけどな?やっぱ客観的にみるとオバケかなって」

アハハ、と友人Aは楽しそうに笑った。